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RESEARCH INTERESTS
・森林管理と生物多様性の保全
・生物の分布を規定する要因とその季節性の解明
日本の国土の約 7 割が森林であり、そのうち約 4 割が人工林です。古くから人が森林を利用してきた日本では、残された原生林はわずかで、その分布も高地や寒冷地に限られています。こうした状況を踏まえると、日本全体での生物多様性の保全上、人工林をどのように管理するかは非常に重要だと考えます。また、気候や地形が異なる地域では、生物群集を構成する種や各種の個体数は異なるでしょう。さらに、季節に応じて移動する動物の場合、これまでよく研究されてきた繁殖期だけでなく、越冬期も考慮することが必要なはずです。人工林という特殊な環境にどんな生物がどれくらい生息しているかを調べることで、地域差や季節差を考慮した生物多様性の保全策を考えていきたいと思っています。
Retention Forestry 保持林業
・森林伐採時に生物や生態系にとって重要な樹木等を長期にわたって残す森林管理
・日本の針葉樹人工林では、広葉樹の保持が生物多様性の維持・回復のための鍵に
上で述べた問題意識から、北海道有林で実施されている「保持林業の実証実験 REFRESH」に2014年より参加し、針葉樹人工林における保持林業について研究しています。夜行性鳥類であるヨタカ、フクロウの調査を継続してきました。また、2018~2019年にはコウモリ類の研究も行いました。2025年より冬の鳥類群集の調査もはじめます!
保持林業の効果のイメージ v1.0 © 河村和洋 CC BY 4.0
左側:主伐(木材を収穫し、樹木の世代交代を促す伐採)時に広葉樹を保持し、その周辺の土壌を荒らさないようにすることで、森林内に生育していた植物種の一部が生き残り、多くの動物種も利用を継続できます。また、開けた場所を好む生物種でにぎわいます。
右側:次の主伐時までに、保持した広葉樹は成長し、一部は老齢木となって大きな洞をもち、様々な動物種の巣穴やねぐらとして役立つようになります。また、立ち枯れ木や倒木となれば、枯死材を利用する種にとって重要な資源となります。さらに、針葉樹人工林に広葉樹や立ち枯れ木が混じることで、多様な光環境ができ、様々な植物種が生育できるでしょう。
STUDIES IN PROGRESS
・繁殖期と越冬期の鳥類の保全に対する保護区の役割
・夜行性鳥類の全国分布に各種人工林とその伐採が及ぼす影響
・厳冬期の鳥類の分布・行動・食物資源に対する保持林業の影響